風立ちぬ

松田聖子のアルバムといえばやはりこれか。
CD選書、買ってしまいましたよ。
このアルバムからほぼ全曲松本隆作詞時代に入る、歴史的なアルバム。
A面5曲は大瀧詠一作曲、ナイアガラサウンド全開。B面とギャップがあるという意見もあるが、B面のサウンドプロデュースは鈴木茂ということで、はっぴいえんどの3/4が集結。(細野晴臣の登場はちょっと遅れる。)


A面
1. 冬の妖精
いいです。ポップで。理屈は要りません。ちなみにジャケット写真はこのイメージかとも思うのだが、写真は妙に暗い感じがする。これまでの路線との違いを強調しすぎた?
2. ガラスの入江
難しい曲らしいです。youtubeには後日談として、この曲をレッスンしてる時に音を上げてるカセットテープがお宝として鑑定されてるTVがあがってました。最初に聞いた時は、う〜んなるほどこりゃ音取りにくくて難しいだろうなあ、という感想でしたが、聞くほどに味わい深くなる曲です。音を上げてた聖子ちゃんが一皮剥けたように歌ってます。
3. 一千一秒物語
不勉強にして知らなかったが、一千一秒物語とは稲垣足穂という人の有名な小説らしい。夜空にペイパームーン〜のあたり、題材というか雰囲気を持って来たものと思われます。ナイアガラっぽい名曲です。
4. いちご畑でつかまえて
これはもう元ネタは「ライ麦畑でつかまえて」でしょうが、「いちご畑」にはStrawberry Fields Foreverも入っているのではないかと想像。歌詞の内容はどちらにもまったく関係ないようですが。
ちなみに実際のいちご畑というのはとても追いかけっこやかくれんぼに適しているとは思えませんが、その辺の適当さが松本流なのでしょう。曲は非常にナイアガラらしい遊びの入ったアレンジ(クシャミとか)、最後のリフレイン(スキャットか)がたまりません。

5. 風立ちぬ
3、4と本歌取りですが、このタイトルは堀辰雄の有名な小説そのまま。ちなみに山口百恵の映画にもなってるようなので、その辺も意識したかも。歌詞の内容は例によってほとんど無関係のようです。
当時「A LONG VACATION」を大ヒットさせた大瀧詠一が「GO GO ナイアガラ」というラジオ番組のDJをやっていて、ある日突然この曲をかけたのがうれしいサプライズだった記憶があります。聖子ちゃんは現代のコニー・フランシスとかなんとか言ってたように思います。(それでコニーも聴いてみたけど、聖子ちゃんのほうがいいなと思ったり・・)
青い珊瑚礁でブレークした印象があまりに強烈で、その後のシングルは売り上げなどではそれ以上にヒットしてても、インパクトとしてはどうも珊瑚礁を超えられないなという感覚を当時抱いていましたが、この曲で完全に新しい局面を展開したように感じました。


B面

1. 流星ナイト
B面は鈴木茂サイド?ですが5曲中3曲が財津和夫作曲。B面1曲目は頭サビから始まります。うちのカセットライブラリーには入っていませんでしたが、この印象的なフレーズはよく覚えていました。名曲です。(サビ以降の部分のメロディがユートピア収録の「小さなラブソング」に類似している感じもしますが、、ああこっちが先か。)
2. 黄昏はオレンジ・ライム
この曲だけが鈴木茂作曲で、あとにも先にもこれだけかも。初めて聴いた印象はアルバムの中でこの曲だけちょっとイメージ違うかなあ、という感じでした。松本隆の歌詞もちょっと時代を感じるような。
曲自体は耳に残って悪くないかも。ネット上の動画では情感たっぷりに歌っていて、レコードより納得できるように思いました。

3. 白いパラソル
財津作曲のシングルヒットですが、当時は高音のサビが全開になりそうで途中でしぼんでしまうような中途半端さを感じていました。まだまだみんなのイメージは「青い珊瑚礁」の松田聖子だったのでしょう。関係なくヒットはしたものの、「松田聖子」の変化をみんな気付いていませんでした。
文献(松田聖子中森明菜)によれば本人にとっても相当歌いにくい曲だったらしく、録音がすっかり煮詰まってしまったというエピソードが紹介されています。
今となれば記憶に刷り込まれた懐かしさが先に立つのですが。
http://www.amazon.co.jp/%E6%9D%BE%E7%94%B0%E8%81%96%E5%AD%90%E3%81%A8%E4%B8%AD%E6%A3%AE%E6%98%8E%E8%8F%9C-%E5%B9%BB%E5%86%AC%E8%88%8E%E6%96%B0%E6%9B%B8-1-2-%E4%B8%AD%E5%B7%9D-%E5%8F%B3%E4%BB%8B/dp/4344980638/ref=sr_1_5?ie=UTF8&s=books&qid=1206748220&sr=8-5
4. 雨のリゾート
これも流星ナイト同様にLP曲ながら耳に残っていました。杉真理作曲ですが一番A面の路線に近い曲です。
杉真理ナイアガラトライアングルとかやってましたね。)B面で選ぶなら流星ナイトとこれかな。
5. December Morning
個人的にはこの曲がピンポイントです。「風花さらさら」「私にスキーを教えてくれる約束を守ってね」
もうスキーなんかいくらでも教えちゃうよ、と思ってしまう自分のいや男の単純さでしょうか。
アルバムの曲調からはちょっとはずれてる感じもしますが、個人的に許す!

このようについ1曲づつコメントをつけてしまいたくなるまさに名盤。白いパラソルがあるので、全曲大瀧詠一にもできなかった(というか一人で一気に10曲はかけないか)のかもしれませんが、B面も粒が揃っています。
実はこの後、前作の「シルエット」を遡って聴いているのですが、驚くほど違います。そういう意味でまさに歴史的転換点のアルバムというのが頷けます。